いわき小名浜菜園株式会社 様
農業の安全、そして未来のために、熱中症対策の強化を
暑さ指数(WBGT)で、作業の継続/中断を的確に判断
農業
農作物の生育に悪影響を及ぼし、価格高騰を招く記録的な猛暑。それは人にも大きな影響を与え、ビニールハウスなどにおける作業では、熱中症リスクをさらに高めている。トマトづくりも、そんな例の一つだ。カゴメ株式会社のグループ会社である、いわき小名浜菜園株式会社でも近年の暑さ問題に直面。以前から実施していた「暑さ指数(WBGT※)」の計測をリアルタイムに、そして省力化もしたいと考えて「SisMil」を導入した。さらなる熱中症対策にも着手している。
※WBGT(湿球黒球温度):Wet Bulb Globe Temperature
左から吉田 力 取締役農場長、生産販売課 宇佐美 竜彦 氏
- お客様の課題
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- 温室は夏場に暑くなり過ぎるため、これまでの熱中症対策では限界が。作業者の安全に配慮して、作業を中断することも。
- 熱中症対策の一手段としてWBGTを計測してきたが、計測に人手と時間がかかり、あまりデータ活用もできていなかった。
- 休憩延長や作業中断などを判断する基準が不明確。実態に即した基準を設けるためにも、WBGTをもっと活用したい。
- 導入後の効果
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- WBGTをリアルタイムに確認し、休憩時間の延長や作業の中断などを適切かつスピード感をもって実施。
- 温室4区画と選果場の、WBGT計測にかかっていた40分ほどの時間を削減。遠隔から確認でき、データも蓄積されるように。
- WBGTをエビデンスに、休憩や中断といった対策の実施ルールをマニュアル化。蓄積したデータで、来期はさらなる対策へ。
導入の背景
暑くなり過ぎる夏場の温室、トマトの生育を大きく阻害
太平洋からの海風により、年間を通して過ごしやすい気候の福島県いわき市小名浜。本来なら農業に適した地域だが、近年の猛暑に多くの生産者が悩まされている。生食用のトマトを栽培する、いわき小名浜菜園株式会社も例外ではない。冬場のために温室で栽培していることが、夏場は仇となる。暑くなり過ぎるからだ。高温ではトマトの受粉を担う蜂の活動が鈍り、人による受粉では手間がかかる上、生産に影響が出るという。苗木が弱って収穫量も落ちるそうだ。そして暑さは人の命にも関わる。WBGTを具体的にどう利用し、熱中症対策を強化しようと考えたかをお聞きした。
さまざまな手段で熱中症対策をするも払拭できないリスク
吉田農場長:当菜園にはガラスハウス型の温室が2棟あり、それぞれ2区画の計4区画、合わせて東京ドーム2個分ほどの広さになります。天窓から熱気を放出できる設計になっているものの熱がこもりやすく、水分の多い植物体を育てているため湿度も上がりやすいことから、温室内が大変危険な状況になりがちです。他に選果場も1棟あり、ここはガラス張りではありませんが、屋根が日射で熱せられて室内の温度を上げます。
また、場内では何台もの機械の排熱があります。換気扇があるものの、温室のような天窓はありません。
宇佐美氏:当菜園では6月から9月を熱中症警戒期間に定め、熱中症予防に取り組んでいます。全社員を対象に熱中症講習を開催し、チェックシートによる体調管理を実施。また、各区画には塩飴や経口補水液を常備し、特に暑い日は早めの水分補給や休憩時間の延長、作業の中断なども実施してきました。このため大きな事故は起きていませんが、暑さによる体調不良者はどうしても出ていました。
導入の効果
WBGTの計測と、その活用に期待が膨らんだSisMil
吉田農場長:当菜園の安全衛生委員会では、熱中症対策を継続的に議論してきました。その中で今夏あらためて注目したのが、以前から計測していたものの活用しきれていなかったWBGTでした。そして、できれば計測や管理の負担を軽減したいと考え、人が計測器を持って現場へ行く必要がない自動計測タイプで、WBGTを離れた場所でもリアルタイムに把握でき、データをクラウド上で管理できる製品がよいという話になりました。
宇佐美氏:この要望に合致したのが、ネット検索で見つけたSisMilです。計測器(子機)から親機へ長距離間のデータ通信が可能なことも、広い当菜園に最適だと思いました。以前、WBGTの計測と記録にかかっていた時間は、4区画と選果場を回るだけで40分ほど。その時間が削減され、遠隔でWBGTを確認でき、どこでリスクが高まっているか一目瞭然なので、早急な対応ができる。しかも、WBGTが一定のレベルを超えるとアラートメールを受信できるため、非常に有効だと思いました。そのような製品は他に見つかりませんでした。
トライアルで不安を払拭、コストを抑制するアドバイスにも感謝
吉田農場長:すぐにトライアル機で、動作確認をしました。高く伸びたトマトの苗木が長く一列に、しかも何十列も並んでいる温室内では、植物体が含む水分に遮られて電波が届きにくいようです。実際、過去にはトランシーバーが通信できなかったことがあり、今も温室内のスタッフへ携帯電話がつながらないことがあります。SisMilも最初はつながりにくかったものの、子機の設置位置を高さ2~3mにしたところ改善され、導入を決めました。
トマトの苗木が並ぶガラスハウス(温室)内
宇佐美氏:子機の性能については、耐水性なども重要でした。温室では薬剤や酸性電解水を散布することがあり、微小な昆虫が機器に入り込むことも懸念されるからです。そこは、屋外設置が可能なSisMilなら全く問題ないとのご回答で安心しました。また、導入にあたって、私どもからは親機3台と子機5台で依頼したところ、親機2台で十分運用でき、その方が効率的であると適切なアドバイスをいただけたため、コストを抑えられました。
より適切に、スピード感をもって熱中症対策ができた
宇佐美氏:実導入では、子機を4区画と選果場に1台ずつ、いずれも屋内中央付近に設置。わかりやすい手順書が付属していたので自分たちで簡単に設置ができました。また運用については、まず管理画面が非常に見やすく、各区画の状況が一覧表示され、その危険度を色などで段階的に表現しているため、一目でリスクを認識できます。クラウドを通じた閲覧はスマホからもスムーズで、操作も明解で困ることはありませんでした。WBGTをリアルタイムで確認でき、危険なWBGTになった場合はアラートを受信できたので、それらを参考に休憩時間を検討し、よりスピード感のある対応ができたと考えています。このような確かな効果を得ながら、警戒期間の6月から9月の必要な期間でレンタルできることは非常に合理的で、高いコストパフォーマンスが感じられました。
来期もSisMilを導入して、熱中症対策をより確かなものへ
吉田農場長:SisMilで計測したWBGTをもとに、休憩や作業中断を判断するための基準を定め、今夏にマニュアル化しました。「いつ、どこが暑いのか」という実データに基づかなければ、実態と乖離した基準になってしまうでしょう。とはいえ、基準値を超えたからといって、業務を中断させてばかりはいられません。そこで、空調服の着用など他の対策を併用することで、基準値から何℃超えるまでは業務を継続してよい、といった運用を実施しました。来期は水冷式ネッククーラー、また冷風機を導入し、産業医と相談しながら熱中症対策を強化する方針です。熱中症警戒期間中はSisMilを導入し、作業の継続判断や休憩時間の取り方などにデータを活用します。また、従業員への教育やフィードバック収集も行い、効果的な対策を実施していく予定です。
設置イメージ
プロフィール
いわき小名浜菜園株式会社 様
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所在地
〒971-8124
福島県いわき市小名浜住吉字入海3-1 -
設立
2003年11月28日
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資本金
1,000万円
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従業員数
160余名(2020年3月1日現在)
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事業内容
〈農業〉
トマトの生産/販売 -
WEB
※本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は取材当時のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。